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第一三共のがん事業について

がんを取り巻く環境

1. がんについて

がんは国内においても世界においても、罹患率、死亡率が高い疾病のひとつであり、2018年には、世界で約1,800万人もの人が新規にがんに罹患しています。日本において、がんは、1981年より死因の第1位であり、2018年には、年間約37万人が亡くなりました。こうしたことから、依然として、がんは、人類の生命と健康にとって重大な問題です。

■ 主要死因別死亡率の年次推移(日本)
主要死因別死亡率の年次推移(日本)

出典:厚生労働省「人口動態統計」をもとに当社にて作成

2. がんの治療

がんの治療は主に、「全身療法」と「局所療法」の2つに分けられます。全身療法には薬物療法があり、局所療法には外科的療法と放射線療法があります。

がんの治療 がんの治療

3. がん治療薬の市場

世界の医薬品市場を治療領域別に見ると、抗悪性腫瘍剤(がん治療薬)が1位、全世界で13.6兆円もの市場規模です。
また、今後も毎年10%以上の成長率で拡大していくと予想されています。

■ 治療領域別売上(グローバル)と予想成長率
治療領域別売上(グローバル)と予想成長率

出典:EvaluatePharma (World Preview 2019, Outlook to 2024)

  • ※1
    治療領域の名称は原文では英語表記だったものを弊社にて和訳しました。原文の表記は以下の通りです。
    ランク1から順に、Oncology, Anti-rheumatics、Anti-diabetics , Anti-virals, Vaccines, Bronchodilators
    ※2
    1ドル=110円で換算

「3 and Alpha(アルファ)」戦略

- 3つの抗体薬物複合体(ADC)に研究開発リソースを集中投入 -

2025年ビジョンの実現に向けて、3つのADC(エンハーツ※1、DS-1062、U3-1402)の製品価値最大化を目指して研究開発リソースを集中投入するとともに、持続的成長の実現に向けてSOC※2を変革する製品群(Alpha/アルファ)の創薬を目指す「3 and Alpha」戦略のもと、研究開発に取り組んでおります。

「3 and Alpha(アルファ)」戦略

  • ※1 エンハーツ(開発コード:DS-8201、一般名:トラスツズマブ デルクステカン)
  • ※2 SOC(Standard of Careの略):現在の医学では最善とされ、広く用いられている治療法
  • (2020年6月現在)

第一三共のADC技術

1. 抗体薬物複合体(ADC)について

ADCとはAntibody Drug Conjugate(抗体薬物複合体)の略で、抗体にリンカーと呼ばれる部分を介して化学療法剤である薬物を結合したものです。強力な化学療法剤をがん細胞を標的とする抗体に載せがん細胞へ運んでもらい、がんを効果的にたたくことを狙った薬剤です。(化学療法剤と分子標的薬については、コラムに記載)

このADCのアイディアは昔からありましたが、技術的なハードルなどもあり、開発が成功し承認された薬剤はまだ少ないのが現状です。

抗体薬物複合体(ADC)
化学療法剤と分子標的薬について:詳しくはこちら

従来、がんの薬物療法の中心は化学療法剤でした。化学療法剤は、増殖の盛んな細胞に対して治療効果を示す低分子薬剤ですが、消化器や骨髄の細胞など、正常な細胞が分裂・増殖することで機能を維持する組織にも影響を及ぼすため、これが副作用となって現れます。

これに対し、分子標的薬は、がん細胞に高発現する遺伝子やタンパク質を標的とするため、正常細胞に及ぼす影響は低く、分子標的薬独自の副作用はあるものの、従来型の化学療法剤で見られるような副作用が比較的少ないのが特長です。(抗体医薬は代表的な分子標的薬です。)

化学療法剤と分子標的薬

2. 第一三共のADC技術の特徴

第一三共のADC技術には6つの特徴があります。
リンカーについては、(1)高い薬物抗体比(抗体1つに多くの薬物を結合)を実現し、がん細胞に多くの薬物を届けることができ、(2)血中での高い安定性を実現し、薬物が抗体から外れにくく、薬物をがん細胞に確実に届けることができ、また外れた薬物による正常細胞へ悪影響を少なくすることができ、(3)がん細胞内で多く発現する酵素で選択的に切断されます。

薬物については、(4)がん細胞を死滅させる作用が強いことはもとより、(5)がん細胞に取り込まれた薬物が周りのがん細胞にも作用するバイスタンダー効果(コラムに記載)を持ち、(6)抗体から外れた後は血中から速やかに代謝されます(よって正常細胞への影響が少ない)。

ADC技術の特徴 ADC技術の特徴

バイスタンダー効果について:詳しくはこちら

がん細胞に取り込まれた薬物が周りのがん細胞にも作用する効果。がんは、抗原が発現しているがん細胞と、抗原が発現していないがん細胞が混在した状態にあるが、このバイスタンダー効果により標的となる抗原が発現していないがん細胞が多く混在した腫瘍に対する有効性も期待されます。

バイスタンダー効果

また、当社ADC技術は汎⽤性があり、同じ薬物とリンカーを様々な抗体と組み合わせることで、異なる標的を狙った薬剤に展開することが可能である点も当社ADC技術の特徴です。

3.3つのADC

  • エンハーツ

    日本と米国で最初の適応(HER2陽性乳がん3次治療)で上市。アストラゼネカ社との本製品に関する戦略的提携のもと、乳がん、胃がん、肺がん、大腸がんなどで適応拡大を目指した臨床試験を計画・推進中。

  • DS-1062

    標準治療の後に再発した肺がんや、標準治療が効果を示さなかった肺がんを対象に、日本と米国でフェーズ1試験を推進中。肺がんにおける早期治療ラインへの適応拡大も検討中。

  • U3-1402

    特定の遺伝子変異を持った肺がんを対象に、日本と米国でフェーズ1試験を推進中。
    HER3陽性乳がんを対象にした日本と米国でのフェーズ1試験の患者登録が完了。
    その他がん種への適応拡大も検討中。

(2020年6月現在)

4.3つのADCに続くADC

当社のADC技術の汎⽤性の特徴をフル活用し、同じ薬物とリンカーを様々な抗体と組み合わせることで、3つのADCの他にも4つのプロジェクト(合計7つ)があります。4つ目、5つ目のADCであるDS-7300(抗B7-H3 ADC)、DS-6157(抗GPR20 ADC)も臨床試験を開始しています。
このように、当社のADC技術は「3 and Alpha」を将来、「4 and Alpha」、「5 and Alpha」 へと発展させるポテンシャルを秘めています。また、当社のADC技術を更に発展させた次世代ADCの研究にも取り組んでいます。

治療領域別売上(グローバル)と予想成長率

※1 臨床開発段階にあるプロジェクト(2020年6月現在)

第一三共株式会社